こんにちは、風と土の自然学校 梅崎靖志です。
第2期となるネイチャーライティング連続講座が始まりました。
まず、10月に開催したネイチャーライティング入門セミナーをレポートします。
今回ご参加いただいたみなさんのほとんどは、
ネイチャーライティングという言葉を初めて聞いた方たち。
何だかわからないけど、おもしろそう!という直感で参加してくれた方もいました。
ほかにも、
自然の中で体験したことを伝えたい。
自然のこと、環境のことを伝えたい。
文章力のスキルアップをしたい。
みなさん、それぞれの期待をもって講座がスタートしました。
講師は、ネイチャーライティング研究の日本の第一人者である、
野田研一先生(立教大学名誉教授)。
この講座を始めたのも、梅崎が社会人大学院生をしていたとき、野田先生の授業を通してネイチャーライティングの魅力を教えていただいたから。
午前は、ネイチャーライティングの基本を学ぶ講義。
午後は、ネイチャーライティングの作品を実際に読んで、シェアをしました。
ネイチャーライティングの基本について、ダイジェストでご紹介します。
ネイチャーライティングって何?
ネイチャーライティングとは、環境文学にふくまれるひとつの分野で、
基本は、自然に関するノンフィクションのエッセイ。
ノンフィクションだから、自然との出会いを通じて、体験したことや感じたことがベースです。
つまり、実話や経験談などですね。
例えば、
自然観察記録
田舎暮らし
旅行記(紀行文)
動物遭遇譚
冒険譚
山岳(登山)文学
釣り文学
風景
などなど、様々な自然との関係を語るノンフィクション。
ただし、自然について書かれていたとしても、新聞記事のように客観的な事実だけで構成されるものは、ちょっと違います。
客観的な事実だけでなくて、主観的な意見が含まれていたり、自然とは何かという思想が述べられていたり、何らかのメッセージや解釈が盛り込まれています。
たとえば、
旅を題材にした文章が、「客観的事実だけ」で書かれていたら、それは旅行記ではなく、ガイドブックです。
主観や解釈が入っているからこそ、文学なのでしょう。
ネイチャーライティングは、交感の文学
野田先生によると、
ネイチャーライティングの本質は、「交感の文学」
「交感」って言葉は、聞いたことはあっても、どういう意味なのかよくわからない言葉かもしれません。
ここでいう交感とは、
「人間と自然の間に何らかの対応関係を見出す感覚あるいは思考」
つまり、人間と自然が呼応している、ということ。
たとえば、
サスペンスドラマで、海辺の断崖絶壁で、殺人犯が刑事に追い詰められる。
崖っぷちで、強い風に吹かれながら、なぜ被害者を殺したのか、犯人が心情を語る・・・。
たとえば、
恋人にふられた少女が泣きながら、パッとドアを開けて雨の中へ駆け出す。
ずぶ濡れになりながら、どんどん遠くへと走って行く。
本当は、
犯人の話は取調室で聞けばいいのに、なぜか強い風が吹く崖っぷち(笑)
恋人に振られたときは、とても気持ちのよい青空の太陽がさんさんと輝いていてもいいのに、なぜか雨。
でも、私たちは、こうした演出を何の違和感もなく受け止めています。
それは、自然と人の心が呼応しているから、崖っぷちの強風や、雨がぴったりくるのでしょう。
ちなみに、
すべて想像からうまれた作品は、自然を題材としていてもフィクションなので、ネイチャーライティングではありません。
自然の中での体験や出来事が、心や感情に影響を与えたとしたら、それは自然と人の心が呼応した結果です。
こうしたプロセスを経てうまれた作品は、作者の心の中で想像がひろがったストーリーであったとしても、現実の出来事を入口としていれば、ネイチャーライティングになるということです。
ノンフィクションとフィクションの境界があいまいな感じがするけど、見方をかえれば事実を描写するだけではない自由さがあり、それが魅力だといえそうです。
午後の部では、ネイチャーライティングの作品についてグループでシェアを行いました。
自家製のケーキやクッキーをいただきながらだったこともあり、グループで感想を話し合う時間はとても楽しい時間となりました。
これは、人とおやつの交感(笑)
今回開催したネイチャーライティング入門セミナーを、オンライン動画で受講できます。
詳細は、こちらをご覧ください。
参加した方たちの感想(抜粋)
野田先生からネイチャーライティングの世界に引き込んでいただけて、自然と人との交換する時間の素晴らしさを再認識できました。心に余裕を持って、一つひとつのシーンをひいてみたり、ズームしてみたりして、切り取り、表現してみたいです。(Y.H.さん)
自分の視点、感じたことを書くだけでなく、相手の視点に入れ替わり、自分側のことについて書いたり、伝えたりする手法があるということが学べ、勉強になりました。(Y.O.さん)
見たものや感じたことをただそのまま表現するだけではなく、相手やものの視点に立って描写をしたり、違う経験とかけ合わせて表現してみたいと思いました。他の方の感想も聞くことができて、勉強になりました。今日ご紹介があった作者の文章も読んでみたいと思いました。(K.H.さん)
「ネイチャーライティングとは何ぞや?」という状態で参加しました。受けてみてネイチャーライティングは身近なものであることが分かりました。多くの参加者のみなさんの考えや視点に触れられたことは大変ありがたく感じました。(金澤真里 さん)
ネイチャーライティングを読むことが、自然を理解することのみならず、自分を理解するのに役立つことがわかりました。(中園顕三さん)
単なる自然描写のしかた、という世界ではなく、「ネイチャーライティング」という世界を知り、触れられたこと、とても自分の世界が広がった気がする。(chiochioさん)
ネイチャーライティングというものを知らずに受講したのですが、野田先生のお話は興味深く、その入口を知ることができました。ネイチャーライティングは写真に似ているというところに関心を持ちました。(だいすけさん)
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