ミツバチのいる暮らしの魅力【手づくり循環生活 5月 2日目レポート その2】

【講義:ミツバチと暮らす(暮らしに役立つ趣味養蜂)】
・講師 村上康裕さん(養蜂家、みつばちの店Beehive(静岡県伊豆の国市))

<畑でのハチ&巣箱の観察>

・ハチに刺されないためのポイント

① GOODな服装
・明るい色でシャカシャカしたナイロン等の素材。
・袖長ズボン&帽子(面布など虫除けネットがついたもの)
・ズボンのすそは靴下の中に入れる。
(ハチは下から上に登る習性あり。誤ってハチがズボンの中に入らないように。)

*NGな服装:黒、赤、ふわふわな素材の服(フリースなど)
⇒ 黒くて動くものは天敵であるクマだと、ミツバチが認識して攻撃してくる。
  また、ふわふわした素材は、ミツバチの足がからまってしまうので、避ける。

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あえて”NGな服装”で登場した村上さん(写真右)

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ツルッとした明るい色のヤッケを上から着る

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さらに、蜂よけの面布とくん煙器で準備完了!

② 巣箱の正面には立たない
正面には出入り口があり、ハチの通り道になっている。
正面に立つとハチの邪魔になるので、正面には立たない。

③ 顔の周りに来たら太極拳の動きのように、ゆっくりと手を動かしながらはらう。
(すばやい動きはハチを刺激するのでNG)

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煙をかけるとミツバチはおとなしくなります。

下の写真に女王バチ、働きバチ、オスバチがいます。
女王バチがどれだかわかりますか?
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答えは、この先にあります。

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ハチが集まり温度が高くなる巣板の中心部は、卵が産み付けられて子育てエリアとして利用されます。

女王バチはこちら。オスバチもご紹介〜
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・ハチに刺されたら

① 患部を冷やす(毒を洗い流す)

①一刻も早く針をぬく(針の中に毒+ポンプがあり、筋肉の収縮活動によって毒を注入し続ける)
→ 針が皮膚に残ったら、爪ではじくように(またはそぐように)毒針を外す。

針をつまんでぬくと、つまんだ際に毒が注入されてしまうので、つままないこと。

針を外したら、ポイズンリムーバーなどで毒を吸い出す。

巣箱の構造

W45×D52×H33×2段を1セットとして使うことが多い
飼育地を移動する際など、利便性が良い。
ハチミツが入った状態だと男性でももちあげるのが大変な重さになる。

・巣箱には、巣板巣が最大10枚入る。貯蜜量を増やすために、
1枚減らして巣板9枚で使っている。
(1000匹×2(表裏)×9=約2万匹が1箱に。今回は2箱なので4万匹!)

・入り口は下段の箱に一箇所ある

・温度の高い巣箱の中央部で子育てを行い、周縁部(温度低)にはハチミツを貯める。
空いた巣房に女王バチが産卵して、ふ化した幼虫には働き蜂えさをやる。
幼虫が成長すると、巣房のふたを閉じてさなぎになる。
羽化するときには、ふたを破って成虫となって出てくる。
空いた巣房には、女王バチが再び産卵する。

・黄色いものがつまっている巣房は、花粉の貯蔵場所。

・巣枠に、巣房の基礎となる巣礎(すそ)をセットしておくと、効率よく巣を作れる。
巣づくりを効率化することで、密集めに集中させることができる。

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巣枠に巣礎をセットした状態

採蜜して空になった巣板は、巣に戻すとミツバチたちが必要な修繕をほどこして、また利用します。

<日本にいるミツバチの種類>
・セイヨウミツバチ:採蜜効率、帰巣性の高さなどから、産業養蜂に適している。
・日本ミツバチ:採蜜量はセイヨウミツバチの1/4〜1/5程度で、とても少ない。巣の環境が悪くなると、すぐに引っ越しをしてしまうため、産業養蜂には不向き。奥が深く、趣味で飼う愛好家が多い。

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<ミツバチの生態>
*群れ(=家族)を守り次世代に引き継ぐための非常に(非情なまでに)合理的なシステム

<社会的構造>
巣箱の中には、3種類のハチがいます。

女王バチ…一番大型。一群に一匹。フェロモンを出し、全体を統率。
真冬以外卵を産み続ける。平均寿命4~5年(7年という記録も)

働きバチ…女王以外のメスバチはみんな働きバチ。
巣に占める割合は、圧倒的多数で、女王バチが生んだ有精卵がメスバチになる(つまり、働きバチと女王バチ)。
寿命は35日間。一日6時間程度働く。飛行距離2~3km。
掃除、育児、巣作り、貯蔵、門番、花粉、蜜、水集め、防衛など営巣活動全般。(産卵、分蜂など女王バチの活動も指示)
生後巣の内部で内勤をし、成熟すると危険な外勤をする。老齢層が若年層を守り人口のバランスを保っている。
⇒ 過酷であるが合理的行動。

オスバチ…女王バチと交尾するためだけに存在する。ミツは集めず、食べるだけ(笑)
オスバチは、女王バチが生んだ無精卵から生まれる。

*分業やエサのストックなど、生き残る戦略として、個体が集まってひとつの生きもののように協力して活動している。

<ミツバチの生態>

・結婚飛行
 女王バチが外に出て、空中で10から10数匹のオスと交尾することで、一生分の精液を蓄える。オスは交尾後、死んでしまう。
 交尾が出来なかったオスは、食べ物が少なくなる秋になると、巣から追い出されてそのまま死んでしまう。

・女王バチの育成
 働きバチが地面と平行な穴で育てられるのとは別に、垂直方向にできた巣房(王台)で、ロイヤルゼリーだけを食べ続けて育てられた幼虫が、女王バチになる。

 複数匹の女王バチ候補が、同時期に育成される。最初に羽化した女王バチが、ほかの女王候補をすべて殺すので、1つの群れに女王バチは1匹だけとなる。(船頭は一人。組織運営の鉄則でもある。)

・変成王台(へんせいおうだい)
 王台で育っている女王候補がいない時、何らかの理由で急に女王バチがいなくなると、働きバチ候補の幼虫から、急きょ女王バチ候補が選ばれる。水平方向の働きバチ用の巣房が、作り替えられて垂直方向に伸びて変成王台がつくられる。

・帰巣性
 太陽に向かって角度、距離を測る感覚が発達している。エサのありかをダンスで仲間に伝える。
 24時間の体内時計を持ち、夕方には同じ巣箱に帰ってくる。
(採蜜のために巣箱を移動する場合、帰りが遅いと置いていかれてしまう。すると、残りの一生をそこで過ごすことになる)

・群れの認識
 匂いで自他を認識する。万が一違う群れの巣箱に入ろうとしても、匂いが違うので、通常は門番によって追い返される。

・プロポリス
 セイヨウミツバチだけが分泌する。森の中の樹液を集めハチの体内で合成される。
 強力な抗菌作用があり、巣の環境を良好に保つのに使う。

 ちなみに、日本ミツバチがプロポリスを作らないのは、巣の環境が悪くなったときには、引っ越すことで対応しているからだと考えられる。それだけ、日本の森が豊かで、巣を作る場所にそれほど困らないということだろう。

・ローヤルゼリー
 内勤の若いハチが植物性たんぱく質(花粉)を食べて、体内で作り出す。

・ミツロウ
 働きバチがハチミツを食べて、体内でミツロウを合成する。

・分蜂(ぶんぽう)
 自然王台ができて、新女王の誕生が近くなると、女王が一定数のミツバチを連れて新天地を探して飛び出す。
 その際、働きバチたちは、数日間は何も食べなくてもいいように、お腹いっぱいにハチミツを吸って出ていってしまう。
 分蜂すると貯蜜が減るだけでなく、ミツバチの数が減ることで集蜜力も落ちるので、勝手に分蜂されないように管理する。
 養蜂家が群を増やしたいときには、人工的に女王バチを新しい巣箱に移して、群れを増やす。

・一部のハチは働かない?→事実!
⇒ 働いていない(フラフラしている)ことで、他のエサを見つけるチャンスが増える。
⇒ 働けなくなったハチのピンチヒッターの役割。

・当日は気温も高く、畑の脇を流れる水路にミツバチがたくさん吸水に来ていた。
 巣に水を運んで、巣箱内の温度を下げる。私たちが夏にする、打ち水と同じことをしている。

<採蜜作業の説明>

① 燻煙器(くんえんき(煙をもくもく出していた道具)写真参照)の煙をミツバチにかける。
・煙を作るために燃やすものは、自然由来のもの(化学繊維などはNG)

②煙をかけると、ミツバチがおとなしくなる。

・ミツバチは山火事が起きると、逃げる前に蓄えたハチミツをお腹に蓄えて逃げる習性がある。
 煙をかけられたミツバチは、蜜でお腹がいっぱいになると落ち着くようだ。

③ミツバチがおとなしくなったところで、貯蜜された巣板を取り出し、採蜜作業を行う。
・採蜜のタイミング:糖度が80度以上まで上がることが理想。糖度が低いと、発酵してしまう。

・最初は、ハチミツの濃度が低い。ミツバチがハチミツに空気を送り、水分を蒸発させて濃縮させる。

・糖度が十分くなると、蜜を貯めた巣房には蜜ぶたがかけられ、密封される。すると、何年でも保存できる。

・蜜ぶたが、全体の三分の一程度にされた頃を採蜜の目安にする。

⇒ 糖度80度前後。78度以下だと水分が多く発酵してしまうため出荷できない。

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十分に濃くなった熟成した蜜ぶたをナイフで切りとる

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切りとった蜜ぶたについたハチミツを、さっそく味見

④ 遠心分離機にかけ採蜜する。
・まわす時間は2分程度
・ハチの嗅覚は犬並みに良い。採蜜に気づかれるとハチが集まってくるので、長袖長ズボンを着用する。
*当日は、採蜜したハチミツを、講座生にプレゼントしてくださいました!
*ハチミツは過酸化水素を含んでいるため、抗菌性が高い。村上さんは採蜜後、巣のかけらなどを取り除いて、そのまま出荷している。
*ハチミツを多く採取するには「良いハチ、良い花、高い気温」が重要。

*巣×1枚 ⇒ 一升瓶1本分のハチミツが採取できる。

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空の巣板と比べると、蜜がたっぷり入った巣板はずっしり重い

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蜂場で使えるように、遠心分離器はバッテリーで動く

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遠心分離器を回すと、ハチミツのニオイがふわっと広がる

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遠心分離器から集めたハチミツを、貯蜜タンクへ

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遠心分離器で採蜜したハチミツをメッシュで濾して、巣のかけらなどを取り除く

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糖度計で糖度を調べる

<ローヤルゼリーの採取方法>
幼虫時代にローヤルゼリーだけを与えられて育つと女王バチになる。
だから、女王バチの巣房(王台)には、ローヤルゼリーがつまっています。
そこで、たくさんの女王バチの候補を育てるために、女王を育てる王台がたくさんついた専用の巣型(人工王台)を使います。
たくさんの女王候補を育てることで、人工的にローヤルゼリーを採取できます。

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ロイヤルゼリーを採るための人工王台

① 巣型の王台の中に同じ群れの幼虫を一匹ずつ入れる

② 巣型を巣箱へセットする。(王台の口が下向きになるように)

③ 働きバチが女王バチ候補と認識し、幼虫を世話する過程(2~3日)でローヤルゼリーが作られ、たまったら採取する。

<ハチミツの種類>
・百花蜜:様々な花から採取されたハチミツ。ヨーロッパでは人気が高い。
・単花蜜:一種類の花(半径2km以内に他の花がない場合)から採取したハチミツ。日本で人気がある。

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<ハチの病気>
・法定伝染病があり、ハチ同士で感染する。伝染病の蔓延を防ぐため、養蜂を行ったり巣箱を移動する際には、場所、数などの届け出と、定期的な検査が必要。
・万が一かかってしまった場合は、巣箱ごと焼却処分しなくてはならない。感染を防ぐため、他の養蜂場のハチミツをエサとして与えることなどは絶対にしない(病気を持っている群だと、ハチミツ経由で感染する)。

【室内での講義】暮らしに役立つ趣味養蜂 ミツバチと暮らす四季

〔要点〕
・養蜂ではハチミツ、ミツロウなどが生産されるが、「花粉媒介」「種実生産」という自然界(畑など食糧生産の場も含む)における役割も担っている。
・生き残るための戦略として群れを構成し、分業、エサのストックなど個体が集まってひとつの生きものとして活動している。
・養蜂家は自然界のキャパシティーを絶対に超えることは出来ないことをリアルに感じている。人の体は無数の命で構成されており、終わったらこの素材も地球に還る、まさに地球の一部。だからこそ身近な自然環境を大切にし、その循環の中でいかに暮らしていけるかを考えている。
⇒「レンタルしましょ!」家、車、土地、畑(!)などそのものが持つ「機能」が使えれば生活できる。資源を浪費しない知恵としての提案。
・外来種であるセイヨウミツバチがいなくても生態系に大きな損失はないが、在来種であるニホンミツバチの減少は生態系に大きなダメージを与える。
・蜜源、花粉源はすべての採餌昆虫の共有財産であり、ミツバチだけが独占してよいものではない。

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DVD、書籍の紹介
DVD
「みつばちの大地」http://www.cine.co.jp/mitsubachi_daichi/

書籍
「ひとさじのはちみつ 自然がくれた家庭医薬品」前田京子 マガジンハウス
「ミツバチ」角田公次 農文協
「ニホンミツバチの飼育法と生態」吉田忠晴 玉川大学出版部
「日本ミツバチ」日本在来種みつばちの会 農文協

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感想
今回も多くの学びをいただき、ありがとうございました。
ぐみちゃん、大ちゃんとも会えて、改めて皆さんから色んなお話が聞けてうれしかったです。

畑も手探りですが、同じ3班の畑の中でも仮説を立て、同じ品種も場所を変えて実験的に植えてみたり、大ちゃんが新加入してくれたり、これから楽しみです。
また私は作業に慣れていないので時間がかかってしまい、やけに忙しい感じがしています。作業日などでじっくり畑と向き合いたいと思います。

村さんのお話ではプロの養蜂家としての覚悟と熱意、そして愉しさがびしびし伝わってきました。
質問が止まらないほど皆さんも心を動かされたのだと思います。
村さんのHPにもありましたが、ハチミツをいただくと言うことは奇跡のような自然界の働きの上に成り立っているんだと思うと、思わず手を合わせたくなります。
またミツバチの講義中にもあった資源の有限性では、1日目のの循環システムデザインで話し合った内容に通じるものがあり、改めて自分の暮らし方について考えてみたいと思います。

以上

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